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レドリルAdventure
■第18話 いまそこにいる僕2
■第17話 いまそこにいる僕1
■第16話 超過密住国2
■第15話 超過密住国1
■第14話 惑星じゅげむ2
■第13話 惑星じゅげむ1
■第12話 凍てつきのハデス2
■第11話 凍てつきのハデス1
■第10話 新たなる旅立ち4
■第09話 新たなる旅立ち3
■第08話 新たなる旅立ち2
■第07話 新たなる旅立ち1
■第06話 群星通過駅
■第05話 大地が泣いている
■第04話 惑星型人工衛星ヌーム
■第03話 旅立ちという名のレクイエム3
■第02話 旅立ちという名のレクイエム2
■第01話 旅立ちという名のレクイエム1
■第00話 旅立ちのプレリュード


頭の中の13号
■第56回 2000/08/11
ヤマトであそぼう
■第55回 2000/02/15
こだまアドベンチャー
■第52回 2000/01/22
ミライザーバンあらすじ 終
■第51回 2000/01/22
ミライザーバンあらすじ 15
■第50回 2000/01/21
ミライザーバンあらすじ 10
■第49回 2000/01/21
ミライザーバンあらすじ 4
■第47回 2000/01/04
ビックリドッキリメール 12
■第44回 1999/12/24
ビックリドッキリメール 11
■第41回 1999/11/27
ビックリドッキリメール 10後
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ビックリドッキリメール 9
■第38回 1999/10/29
ビックリドッキリメール 8
■第37回 1999/10/29
ビックリドッキリメール 7
■第36回 1999/10/16
ビックリドッキリメール 6
■第35回 1999/10/16
ビックリドッキリメール 5
■第23回 1999/05/24
続・目から鱗がとれちゃった話
■第25回 1999/06/05
かってに解読
■第34回 1999/10/16
ビックリドッキリメール 4月
■第20回 1999/04/18
GREAT PEOPLE 6
■第19回 1999/04/18
GREAT PEOPLE 5
■第17回 1999/03/21
目から鱗がとれちゃった話
■第13回 1999/02/21
GREAT PEOPLE 4
■第12回 1999/02/21
愛する“モノ”への鎮魂歌?
■第10回 1999/02/07
漢字の反乱III(完結編)
■第 9回 1999/01/30
Galaxy Detective 999
■第 8回 1999/01/30
漢字の反乱II
■第 7回 1999/01/25
漢字の反乱
■第 6回 1999/01/21
GREAT PEOPLE 3
■第 5回 1999/01/21
GREAT PEOPLE 2
■第 4回 1999/01/21
GREAT PEOPLE 1
■第 3回 ????/??/??
銀河てちゅどう999 3
■第 2回 ????/??/??
銀河てちゅどう999 2
■第 1回 ????/??/??
銀河てちゅどう999 1

銀河鉄道 Another Journeysレドリルアドベンチャー

−前回のあらすじ−
 少年は超特急には乗らず,各駅停車ぶらり旅をしていた。
 そのころ,超特急はまだキーアデスにいた。

第004話 惑星型人工衛星ヌーム

(各停列車) アナ  「本日は銀河鉄道キグレ線をご利用いただき誠にありがとうございます。 ウンス  当列車はキーアデス始発,スラム経由グレイン行き各駅最終列車でございます。      次の停車駅は,ヌーム,ヌーム,惑星型人工衛星ヌームでございます」 少年  「ヌームか〜。聞いた話じゃ,緑の多いリゾート衛星らしいけど………。      どんなのかなぁ…。ふふふ。楽しみだなぁ」 少年ははじめて見る衛星を楽しみにしているようだ。 なんとか見ようと窓に顔を押しつけていると,ついいましがたこの車両に入ってきた男が 近づいてきた。 男   「何を見ているんだい?」 少年  「え? あ,あの,その,星を……衛星を……」 男   「衛星? ああ,ヌームのことか。あんなものを見たって面白いとは思えないけどねぇ」 少年  「緑に覆われたリゾート衛星なんでしょ? だったら見てみたいよ」 男   「緑…?」 男は,不思議そうな顔をすると,なにやら考え出した。 少年  「どうしたの?」 男は,じっと少年の顔をみつめると,こう言った。 男   「もしかして……キミ,生身の人間かい?」 少年は,その問いに答えた。 少年  「え? あ,うん,そうだけど……」 男はため息をついた。なるほどな,といった顔をしながら。 そして頭をかきながら,しまった,という表情をした。 男   「そうか……。じゃぁ,知らなくて当然か………」 少年  「???」 男   「生身の…それも子供なんて,この列車で見かけたことないし…てっきり…」 少年  「機械化人だと思った?」 男   「ああ,まあね。でも,この列車に乗ってるということは,いずれバレるからいいか…」 少年  「バレる?」 少年は,話の筋が飲み込めないず,きょとんとしている。 男   「さて,何から話すかな…。うーん,ん? ちょうどいい,あれを見てくれよ」 男が指差した方向には,なにやら明かりの点滅したドス黒い球状の物体があった。 少年  「あれは?」 男   「あれがヌームさ」 少年  「え? あれが!?」 男   「そう。あれがヌームさ」 少年  「全然,緑に覆われてなんかないじゃんか」 男   「そりゃそうさ。それはウソだからね」 少年  「ウソ!?」 男   「リゾート衛星ってのも,ウソ。      まぁ,もともとはホントにそうなるはずだったんだけどね」 少年  「それじゃ,あれはいったい……」 男   「軍事衛星だよ。この星の外と中を監視して,なにかあれば攻撃するのさ」 少年  「それじゃ,聞いていたのと全然違う……」 男   「なんでコイツが作られたのかは知らないが,コイツの存在っていうかなぁ…。      つまりあれだ,軍事利用のための衛星だってのを知られないように,      リゾート衛星だっていう情報を流してカモフラージュしたんだよ」 少年  「そんな…おかしいよ,そんなの」 男   「で,だ。管理を全自動化してもね,さすがに人の出入りがないとあやしまれる      ってんで,わざと人の出入りを行うようにしたんだよ。      長期間そこに滞在できるように,惑星のような環境を作ろうとしたんだ」 だんだんと近づいてくるヌームを眺めながら,二人の会話は続いた。 少年  「……惑星って感じじゃないね……」 男   「実は,話には続きがあってさ,今,惑星環境はないんだ」 少年  「え?」 男   「機能をあとから追加したろ? 出来上がっているシステムに無理に追加したんだ。      軍事用の機能と,惑星としての機能を両立できなかったんだよ。      だから結局,惑星機能を捨てちまったんだ」 少年  「……なんか,全然意味がないね……」 男   「お偉いさんの考えることはわからんよ。そもそもあの衛星が何のために      あるのかってのもわからないんだから。外からの攻撃は皆無だし」 少年  「キーアデスから,人が出て行くのもあまりないね」 男   「言ったろ? 星の外と中を監視してるって。無理に逃げ出そうとすれば,      ドカンさ。もちろん,あれが軍事衛星だってのは知らされてないから,      ドカ〜ンの理由もわからないってわけだ。だから怖くてそんなことはできない。      唯一,星から出る方法は,銀河鉄道だよ」 少年  「なんでだろう。なんで,キーアデスから出ちゃいけないんだろう」 男   「さぁな。機械化人は,結構自由にキーアデスから出ていってるけどなぁ。      生身の人間だけさ,自由に出ることができないのは」 少年  「おじさんは,どこへ行くんだい?」 男   「俺か? 俺は,ヌームさ。1年間管理人として,ヌームに行くんだ」 少年  「管理人?」 男   「そう,管理人。ヌームの労働者とすべての機能の管理をする管理人」 少年  「労働者……」 男   「あそこで働くのは,管理人を除けばすべて受刑者さ。だけど放っておけば,      何をしでかすかわからないってんで,管理人のおでましなのさ」 男はため息をつくと,話を続けた。 男   「あそこは,最後の流刑地さ。あそこに行ったらオシマイ…。      あそこから戻ることのできた受刑者はいない…。      彼らにとっては,あそこで働くってのは死刑を宣告されたもおなじさ。      ツライ環境で,ツライ作業が待ってる。ラストプリズンって呼ばれてるよ」 少年  「………でも,衛星が完成すれば,戻れるんでしょ?」 男   「不可能さ…。あの衛星,軍事機能は100%完成して,機能してる。      彼らに課せられたのは,惑星環境との両立さ。キーアデスの最高の技術者が      ダメだったんだ。無理さ。永遠に,ヌームから逃れることはできないんだ。      管理人はそういうのを1年間見ていなければならないんだ。      俺の前の管理人は,1年持たなかったよ」 少年  「………………でも………最初から諦めてたら何も始まらないよ。      もしかしたら,完成できるかもしれないじゃないか。      時間はかかるかもしれないけど……きっといつか…って」 男   「………前向きなんだな。理想……夢……希望……か。      キーアデスで育って,本気でそんなことを考えるなんてな……。      キミを育てたご両親は,きっと素晴らしい人なんだろうな」 少年  「へへへ…」 少年は照れくさそうに,鼻をこすっている。 アナ  「まもなくヌームに到着します。本日は傘の忘れ物が多く発生しております。      忘れ物にはご注意ください。まもなくヌームです」 しばらくして列車はヌームへ到着した。 ここで降りる者は,先ほどまで少年と話をしていた男だけだった。 男   「話相手になってくれてありがとう。ずいぶん気が楽になったよ」 少年  「仕事,がんばってくださいね」 男   「ああ,まかせろ。お前も気をつけてな」 列車はすぐ出発した。列車が見えなくなるまで男はホームにいた。 彼を包み込んでいた不安と焦りと絶望が,少年と話をすることで取り払われていたことを 男はわかっていた。その屈託のない笑みと希望に満ち満ちた瞳を,彼は印象深く心に刻み つけ,これからの自分の任務に望むことだろう。

後世に伝わる書物の中にこんな一遍がある。

『ヌームと名のついた人工惑星がある。
絶望を垣間見ながらも諦めることの
なかった者達の手により,ただの衛星から
さらなる飛躍を成し遂げた。』

と。それはまだ先の話だ。

【第005話へつづく】 −次回予告− その星は泣いていた。赤く染まった星が泣いていた。 人のいないはずの星に,なぜか列車は止まる。 次回,第005話は「大地が泣いている」をお送りします。

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