銀河鉄道 Another Journeysレドリルアドベンチャー

第000話 旅立ちのプレリュード

フォォォォォーーー……

遥か遠く闇の彼方から，その音は聞こえてきた。
頭につけたライトからの，まばゆいばかりの光があたりを照らしながら，
彼方から彼方へ，その列車は走り抜けていった。

ボッボッボッボッボッボーーーーー！

突然，けたたましく音を出し，中では警告音を発していた。

(機関車内部)

車掌　　「どうしたんだ，機関車。何があった？」
機関車　「左方向カラトテモ大キナエネルギーガ近ヅイテイル！
　　　　　コノママデハ，コノ列車ハ破壊サレテシマウ！」
車掌　　「何だって!? 一体，誰がそんなことを！」

驚き慌てる車掌。

機関車　「ワカラナイ。
　　　　　トニカク，走行スピードヲ150％アップシ，回避スル！」
車掌　　「わ…わかった。
　　　　　……乗客がいないのが，救いだ。万が一があったら………」

列車は急激にスピードアップする。
列車がガクンと揺れ，車掌は，おもわず転んでしまった。

車掌　　「あいたたたたた。
　　　　　おい，機関車。もう少し，やさしく走れないのか。いたたた」
機関車　「ソンナ悠長ナコトハ言ッテイラレナイ。
　　　　　ソレニ，乗客ハ一人イル。
　　　　　乗客ノ安全ヲ確保スルノハ，車掌ノツトメデハナイノカ」

車掌　　「乗客がいるだって!? 馬鹿な!!
　　　　　最後の乗客は，3つも前の駅で降りたし，それから誰も乗っていないぞ」

まるで，機関車の間違いである，と言わんばかりの口調で，車掌は叫んだ。
機関車は冷静に返す。

機関車　「シカシ，現ニ，乗客ハイル。正規ノ乗客ダ」

車掌は納得がいかないものの，乗客の安全を守らなければならない立場上，
しかたないと諦め，まずはその乗客のもとへ向かうことにした。

車掌　　「それで，その乗客はどこにいるんだ」

車掌は機関車に尋ねた。機関車は答えた。

機関車　「最後尾ダ」

それを聞いた車掌は，一目散に最後尾へ向かう。
列車の左側が気になるのか，時々ちらりと，右を向いたりした。
車掌が最後尾の車両へ着いたとたん，列車内を衝撃が走った。

ドーーーーーーーーン!!

車掌　　「うわあわわあわあわっわわ，ま，まさか，車両に!?」

おもわず，前へつんのめる車掌。
そのまま，前方にいた人物にぶつかってしまった。

車掌　　「も，申し訳ございません！」
謎の人物「ん？ああ，構わないよ。それより，第二波が来る！
　　　　　いまのは，空間軌道直撃だけで済んだが，次はおそらく
　　　　　空間軌道を破ってくるはずだ。もっと，もっとスピードを!!」
車掌　　「は，はい。…あ，そ，それより，お客様！
　　　　　ここは危険です！ 万が一に備えて，機関車まで来てください」
謎の人物「他の乗客は？」
車掌　　「いません。あなた様一人だけです」

謎の人物は外を一瞬眺めると，車掌と共に機関車へ向った。
走る二人。
数車両を走り抜け，真ん中あたりの車両まで来たとき，
謎の人物はチラリと左を見て，そして叫んだ。

謎の人物「車掌さん，伏せて!!」

その瞬間，後方からの大爆音と共に，先ほどとは比べ物にならない衝撃が列車全体を襲った。

ズドドドドーーーーーーーン!!!!

左方向から放たれたエネルギー砲のようなものが，列車後方の車両を破壊したのだ。
次々に襲いかかるエネルギー砲。いくつもの車両が破壊されていく。
二人のいる車両も窓ガラスが割れ，いくつものエネルギー砲が突き抜けていった。
そんな光景を目の当たりにした謎の人物は砲弾のさなかを立ち上がる。

車掌　　「あ，危ない，一体，何を…！」
謎の人物「このままじゃ，この車両も破壊される！
　　　　　…………！いちかばちか！走り抜ける!!行くぞ!!」

そう言うと，車両を砲弾突き抜ける中，謎の人物は走っていった。
それを追うように，車掌も走った。
前を後ろを，走りぬける彼らを嘲笑うかのように，砲弾は突き抜けていく。
そんなギリギリの中を，ただひたすら機関車めがけ走り抜けて行ったのである。

謎の人物「よし！ もうすぐだ！」

機関車は，もう目の前に迫っていた。
その時だった。
大きな閃光が彼らの目の前，いや，正しくは左側の窓から前方に見えた。

ズドドドドドドーーーーーン!!!!

謎の人物「!!!!」
車掌　　「き…機関車!?」

直撃である。
さらに容赦ない追撃が，無数の光のラインが，機関車を襲った。

車掌　　「や，やめろーーーー!! き，機関車が，機関車が!!」

爆音と衝撃走る中，車掌は叫ぶ。
謎の人物は，歯を噛み締め，こぶしを握り締めて，窓から左側を凝視している。

謎の人物「くそっ，どこだ，どこから撃っている!!」

だが，砲弾が来る方向を見ても，何も見えない，何もない。
すでに何十発の砲撃をうけている機関車。それでもなお，走りつづけている。
しかし，先ほどよりスピードは，遅くなっていた。
明らかに，出力が低下していた。
泣き叫ぶ車掌。外を凝視する謎の人物。機関車を襲う謎の砲弾。
その時，謎の人物が見ていた方向でキラリとなにかが光った。
謎の人物は，ニヤリと微笑み，つぶやいた。

謎の人物「見えた…あんなところにいたか！」

その見えた方向に，銃をかまえると，ねらいをさだめはじめた。

車掌　　「な，何を!?」
謎の人物「撃つのさ。コイツなら，あれくらい破壊できる」

車掌は，その銃を見て驚いた。
グリップに輝く髑髏，どこか見慣れたその銃は，かのコスモドラグーンだったのである。

車掌　　「そ，その銃は…コスモドラグーン!?」

一発のエネルギー砲が，謎の人物の左頬をかすめたが，微動だにしない。
謎の人物にとって，いまはただ，銃をかまえる自分とその銃の切っ先向う標的しか
見えていない。引き金を引く，その瞬間を待っているだけだ。
一瞬の間を置き，人差し指が動く。
銃の引き金が引かれ，そして，銃口からあふれんばかりのエネルギーが放たれた！
1発，2発，3発，………引き金は何度と引かれ，闇の彼方へと消えていった。
車掌は，わけもわからず，ただ見ているだけだった。

謎の人物「よし！」

銃をホルスターにおさめ，ニヤリと笑う謎の人物。
さきほどまでの，雨のような砲撃がピタリと止み，瞬間，列車左側で大爆発が起こった。

ズズズ……ズドドドドド…ズゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ………！

車掌　　「あ，あれは」
謎の人物「どこかの戦艦……，いやもっとずっと小さいやつだろう。
　　　　　ステルス仕様だったんだろうが，一瞬，船体が見えた」
車掌　　「………!? あなたは一体……」
謎の人物「……俺か？
　　　　　俺は，ロッテ。ドルフィタス・ロッテだ。
　　　　　それより，機関車へ急ごう。
　　　　　直撃をくらったんだ。被害が気になる」
車掌　　「え？ あ，は，はい」

二人は，機関車内部へ入る。
こげくさい匂いが中を充満している。

車掌　　「こ，これはひどい………。お，おい，機関車，大丈夫か!?」
機関車　「ガガッ……………損傷率78％ ………ガガッ……………出力14％
　　　　　スベテノ車内サービス停止……………ガッ……
　　　　　現状デノ長時間ノ走行維持……不可能…タダチニ修理ヲ……」

今にも，止まってしまいそうな声。

車掌　　「ち，近くの星…星…この星系では………管理局に通信を…
　　　　　銀河鉄道管理局，管理局，応答願う。管理局!?
　　　　　………だ，だめです。通信機能が破壊されています」

ロッテ　「宇宙路線図は？」
車掌　　「あ，は，はい。
　　　　　えーっと，機関車……はだめか…少々お待ちを」

車掌は，車掌室へ向った。
ロッテは，機関車の計器に手を置いてつぶやいた。

ロッテ　「……大丈夫だ。お前は……，壊れない」
機関車　「…………ガガ……………」

数分後，汗をかき，息をあげながら車掌が飛び込んできた。

車掌　　「はあ，はあ，はあ，はあ，う，宇宙路線図です…ぜは〜ぜは〜
　　　　　こ，この近くだと……ゴホッ……惑星グレインなら十分な設備が…」
ロッテ　「現在位置は？」
車掌　　「さきほど，惑星スラムを横切りましたので，このあたりです」
ロッテ　「うーむ………グレインは遠いな………
　　　　　一番近いキーアデスで応急処置をしたほうがいいだろう…………」
車掌　　「キーアデス？
　　　　　えーっと，………この路線を使えば行けなくはないですね，ハイ」
ロッテ　「よし，そうと決まれば，一仕事だな」
車掌　　「は？ 一体何を??」
ロッテ　「運転だよ，運転。機関車は走るだけで精一杯なんだ。
　　　　　手動で運転しなきゃダメだろう。しっかりしろ，車掌！」
車掌　　「あ，は，そうでした。失礼しました。
　　　　　それでは，これから手動による運転に切り替えます」


列車は一路キーアデスへと向かう。

キーアデス……とても小さな星だ。

この物語はこの星に住む，

とある少年の旅の物語………。

今まさに，運命の歯車が動き始めていた。



【第001話 へ つづく】

−次回予告−
少年を襲う深い悲しみ，そんな彼の前に現れる謎の女性。
その時，少年は意外な行動をとった。
次回，第001話は「旅立ちという名のレクイエム」です。