第8話 「無限への旅立ち・1」
■登場人物
沖田十三
古代進
森雪
佐渡酒造
ミーくん
羽黒妖
地球防衛軍ゴミ(男(司令))
地球防衛軍その他の人達

■登場メカ
宇宙戦艦ヤマト
羽黒妖の乗ってきた飛行艇
スターシアシップ

■ストーリー
地球周回軌道上で低速航行中のヤマト。そのヤマトへ向かって日本から羽黒妖の操縦する輸送艇が飛び上がった。そのころ,遥か太陽系の端では,メタノイドの艦隊がスターシアシップを追っていた。しかしスターシアシップの放った一撃が,メタノイド艦隊を殲滅。スターシアは地球人類へメッセージを送ったのだった。
■ヤマトなど存在するはずはない
「ヤマトなど存在するはずはない!! 空間の概念も時間の概念も光重力の概念についてさえも無知な…それで何もかもこの宇宙さえ,自分で造ったと思い込んでいた男が,1000年前に粉砕した事になっているのに」

上記は,地球防衛軍の指令の言った言葉。 おそらくここで触れられている人物は西崎義展氏であり,粉砕とは完結編のことではないかと思われる。 999もそうだが,ここ近年はこの手の子供の喧嘩じみた話が多い。 そして,そういう回は,他の回に比べるとつまらない。

漫画だからまだ“(苦笑)”で済むが,映像にまで持ってきた場合,はたして評価はどうなるだろうか。 たぶん悪いと思うが。 …というか,すでにあまり評判はよくない。

■さっき乗り込んだばかりなのに
古代は父親に,森雪は母親に,ヤマトの操作方法を聞かされつづけた。 1000年間,代々それを続けてきたというのは律儀という気もしないでもない。 その光景を想像すると,どうだろう。 奇妙というか,変というか,ちょっと引いてしまう…。

が,それより驚くべきはその内容が正しかったことだ。 1000年間,32代にわたって伝言ゲームのようなことが行われてきたわけだが, 数人でやっても内容に違いが出てくるというのに……。

■両親はもういない
森雪の家族はもういない。公害と食糧難で,全員病に倒れてしまった。 食糧難って…いったい何があったんだろう…。 古代も家族はいない。これはすでに劇中で描かれている。

私の家はここだけ,という雪の言葉に対し,古代も同じく答える。 ここで言っている家は物理的な家ではなく,心のよりどころというような意味を持っている,のではないかと思う。

■誰かが羽黒家の養子にでもなったのかね
さて,この羽黒妖。 初出は「超時空戦艦まほろば」でした。正確には「ケースハード」内の まほろばシリーズになります。

彼女は新宇宙戦艦ヤマト 第4話(※1)作中でこう言いました。
「ヤマト誕生の更に1000年前からの縁」
と。ヤマトが誕生したのは2199年(※2)として考えても,その1000年前 は1199年。鎌倉幕府がはじまってまだ数年というところです。正直, 本誌を読んだ時は,…おいおい(苦笑) という感じでした。

その3ヶ月半後,「松本零士 トークアンドサイン会」(※3)で面白いことを聞きました。 羽黒妖は,殺生石伝説(※4)にまつわる人物であるという。 はじめは憎悪を持っていたが,さまざまな不幸を見ていくうちに同情の念を持つようになっていく。 若者の味方となり,自分がこれと決めた人の盾となるべく今を生きているそうです。 2000年以上生きていることになりますが,実態をもった精神体のようなものと説明していました。

これだけではまだヤマトとの関係はわかりません。これから明らかになっていくでしょう。 では殺生石伝説とはどんなものでしょう。実は私もアバウトにしか知らないので,ちょっと調べつつ簡単に書いてみました。

昔々,今で言うところの中国に,白面金毛九尾という妖狐(※5)がおりました。 この妖狐,それはそれは美しい女に化け(※6),時の皇帝にとりつくろい惑わし,思うが侭をつくしておりました。

しかし,いつしか化け狐の仕業とばれてしまい,日本へとやってきました。 日本に来ても同じことをやっている(※7)と,やはり化け狐の仕業ということがばれてしまい(※8),那須まで逃げてきたのでした。 しかしながら,あわれ那須で退治(※9)されてしまい,妖狐は殺生石へと姿を変えてしまったのでした。

ところが,この殺生石,これで話が終わらず,その後もこの石に触れたものへ災いをもたらしたのでした。 そこで,偉い人がこの石を供養(※9)したところ,怨念が消えたという伝説。

供養の後,伝説では天へ上ったとされてますが,松本作品ではこれを羽黒妖としていまなお活躍させようということでしょう。 ちなみに,例の番組で那須に行ったときに思い付いたらしいので,最初にキャラクターありき,設定は後づけになりますね。

※1 小学館「月刊 コミックGOTTA」2000年7月号掲載

※2 手元にヤマト関連の資料がないので,正確なところはちょっとわかりません。詳しい方のフォロー願います。

※3「交響組曲 新宇宙戦艦ヤマト」発売記念に2000/10/8に山野楽器で,2000/10/14に石丸電器で開催

※4 事の発端は,2000/5/14,BS2放送の「奥の細道をゆく」で那須を訪れたことにあるそうで

※5 白い顔,金色の毛,九本の尻尾の狐の化け者。イメージがわかない方は「うしおととら」に出てきた白面の者を思い浮かべてください。

※6 最初は,殷の国で妲己に化けてたそうで(※A)。日本にくる前は別の人に化けていた。そういえば封神演義も妲己が悪者扱いだなぁ。なんか関係あるんだろうか。

※7 この時化けていたのが,玉藻前。またまた全然関係ないけど,GS美神後半に妖狐タマモが出てきましたが,ここから来てます。

※8 阿部晴明の子孫にばれたらしい。そういえばGS美神では母親である葛の葉は美神の前世であるメフィスト・フェレス本人として描かれてましたねぇ。いやまったく今回の話と関係ないですが。

※9 退治されたのが約1200年前,供養されたのが約700年前だそうです。

※A 3000年くらい前。…とすると,羽黒妖は新ヤマトの世界で最低でも4200歳(核爆)

■佐渡先生と一緒に乗っている謎の人物
シルエットになっていて謎。島ではないかと思われたが,どうも違うらしい。

■何度もコケ落ちる第3艦橋
「何度もコケ落ちるので有名じゃった下部第3艦橋が恐ろしく強化されておる」

これは佐渡先生のセリフ。 この新ヤマトで第三艦橋が出てきたときに,多くの読者が思ったことでもある。 松本先生本人も第三艦橋がよく落ちたことを気にしていて,トークショーでも新しいヤマトは第3艦橋を強化すると言っていた。 佐渡先生のこのセリフを見たときは,笑えた。 もちろんいい意味で。ナイスツッコミである。

■移動性ブラックホール
その正体は戦艦ファンタズマ。 ファンタズマについてはバックナンバーを見てもらうとして,こいつらはスターシアシップを追いかけて太陽系内へ入ってきた。 しかし,ファンタズマは確かオリオン方面へ行き,メタノイドの乗るクルーザーを残したはず。 スターシアの出現により,ファンタズマも向かわせたのだろうか。 まぁ,なんにせよ,スターシアシップから放たれた一撃により全滅した。

それよりも,地球防衛本部はなぜ“メタノイド”を知っていたのだろうか。(下記セリフ参照)

「メタノイドの艦隊がV字形のフォーメーションで追ってきますが,距離は開いています!!」

■私が誰か判りますか??
羽黒妖とスターシアは知り合いらしい。

「太陽系内外の居住圏にいる地球人類に呼びかけます」

本人にリスクがあるらしい。 通信が傍受されてしまうにしても,本人のリスクはないように思えるが,自分がヤマトに乗ることを知られたくないのだろうか。 謎。

■新ヤマト スペース通信 Vol.2
今回はカラーページのために,ヤマトの後じゃなくて,途中の変な場所にあったので立ち読みの人は気がつかなかったのではないかと思う。

今回の内容は,8/14と15に行われた交響組曲新ヤマトの収録について書かれている。 松本・宮川両先生の簡単なコメントも掲載。 原作から描きおこされたセルが1枚載っている。 それと,山野楽器と石丸のトーク&サイン会の告知もあった。


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